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暮らしを作る「時間」とは(5月の短信より)

 猛暑や気温の乱高下、台風発生など今年もあちこちで異常気象を耳にします。こちらはいつまでも何となく薄寒い初夏です。

 今月は1月以来のひろんた豚で、子どもの頃に脚を傷めたにも関わらず大きく育ってくれました。入れ替わりで子豚を入れるといつも大豚に虐められるのですが(そして脚を傷める)、今度は肩透かしのように平和です。1頭だけになって寂しかったのかな、3匹の子豚にまとわりつかれてまんざらでもなさそうです。

一緒にどろんこ

 さて5月連休には、岡山から大学生の河野さんがやってきました。ひろんたの空気やものづくりの味わいをしっかり感じていってくれたようで、その真摯な姿勢や質問にこちらも新鮮な気分になりました。

特に「鶏を食べるまでにはたくさんの時間と勇気がいる」ことは、経験によってしか得られない実感です。正直で心和む感想文をお楽しみください。

小雪ちゃん、ぜひまた来てね!

(歌野杳)








【ひろんた体験感想】


はじめまして!大学 3 年生の河野小雪(こうの こゆき)と申します。広島県出身で現在は岡山市に住み、まちづくりについて学んでいます。

私は、不器用で 1 つ 1 つの動きが遅いことに悩んでいました。カフェでアルバイトをしていた時のことです。スイーツの提供など、速いスピードを意識し、失敗しないようにとヒヤヒヤしながらストレスを抱えながら毎日を過ごしていました。

そんな中ひろんた村には、緑に囲まれ、鶏や豚が身近にいる生活、ものや暮らしを手づくりする自給自足の暮らしがあることをホームページで知りました。「今の私の生活では味わうことのできない新しい体験がたくさんできそう」と思い、メールを出して 5 月 2 日から4 日間「自給の暮らし体験」を行なうことになりました。

 ひろんた村から帰宅した今、振り返ってみると今回の体験のキーワードは「時間」でした。歌野家には、大きな石がごろごろとある川が近くにあり、家から聞こえる川の音や冷たくて新鮮な水に感動しました。初めて訪れた場所なので緊張していましたが、風景と音でリラックスでき、心地の良い場所となりました。

歌野家の下を流れる川

4 日間、飼っている鶏や畑で採れた野菜などで料理を作り、炭や薪を使った日常を体験しました。その中で印象に残ったのは年をとった鶏を絞める作業です。ひろんた村で飼育される鶏には初めて会うため、私には鶏たちとの思い出がなく、平気で作業できると思っていました。しかし鶏の首を持ち包丁を持つと、様々な思いが溢れました。「自分の手で苦しむ鶏を見たくないからやりたくない」と思いながらも一度決めたはずなのに行動に移せない自分に腹が立つ。さらにこんな時だけ「鶏が可哀想、怖い」と感じ、行動できない矛盾した自分への怒りが込み上がってきました。パニックになり最終的に絞めることはできませんでしたが、落ち着いた後は解体作業を行ないました。脂肪の量や付き方、臓器の大きさには個体差があり、1羽として同じ鶏はおらず、1 羽 1 羽の命を毎回いただいていることも改めて気づかされました。また、お肉も食べて骨で出汁もとり、食べられる部分は全て調理、おいしくいただきました。鶏を飼い、おいしく食べるまでにはたくさんの時間や勇気が必要であり、今の私の暮らしの中では味わうことができない出来事でした。

 

納豆、豆腐、新たまねぎの鶏スープ、玄米ごはん、日干茶。全てひろんた産の素朴だけど満足メニューです

また、納豆・豆腐・パンを作る体験もしました。パン作りの時、杳さんの「パン作りでは、微生物も生き物なので生き物の活動(発酵)に合わせて作らなければ成功できない」という言葉が印象的であり、何度も発酵状況を確認しながら丁寧に作りました。豆腐は思ったよりも軟らかくなりましたが、自分で作ったものは達成感もありおいしくておなかも心も満たされました。

 4 日間、歌野家の皆さん、ひろんた村母屋の方々など、あたたかくてユニークなみなさんと関わることができたことも貴重な体験でした。お話をする中で、「何事も完璧を目指さなくても、できないことは助け合いながら手で暮らしを作っていくこと」が大事なんだ、ということが自分の心にすっと入ってきました。そしてこんなことも考えました。

“季節の流れや生き物の活動に合わせ、その時にとれるものを最大限に活かしながら必要なものを自らの手で作っていくことは、暮らしに欠かせないだけでなく、心身を豊かにし多くのエネルギーを得ることができるんだ“

“今の暮らしの中でも、時には立ち止まり、豆腐・納豆など教わった暮らしの技術を活かしながら必要なものを自らの手で作り、エネルギーを得るだけでなく、自分らしく楽しい暮らし方を追求したい”

 スピードを求められ、アルバイト先でできない自分に悔しい思いをしたこと、ひろんた村で鶏を絞められず自問自答したこと、発酵という自然との結びつきで食べ物をいただけること。どれも私にとって必要な「時間」でした。速いか遅いかという基準ではないものさしをもって暮らすことの心地よさ。私の目指す未来が少しずつくっきりしてきたように思います。

 4 日間はあっという間であり、炭焼き体験、豚肉の加工などまだまだチャレンジしたいことばかりです。また、ひろんた村に行ってもいいですか?


【加工を終えて】

今回は三ヶ月ぶりにひろんた村の豚。そして肉量81kgとこれまた久しぶりの大豚。大きい割には脂肪少なく赤身 たっぷりの肉でした。肥育月数も今までに比べ長く、恐らく一年を超えていると思われます。通常は10ヶ月か11ヶ月。そのせいでしょう、肉がしっかり熟成した感じ。その分固いようです。ベーコンは程よい三枚肉のものもありますが脂肪の少ないちょっとベーコンらしくないものもあります。ご容赦を。

 そして問題のソーセージ。味菜自然村の豚のようにプリプリとまではいきませんが、ひろんた豚としてはよく結着していていい出来です。でも時々固い筋も含まれていてうーんこれが大豚の肉かと思わされます。ハムもモモハムのように脂肪の少ないものはやや固いかもしれません。しっかり噛みしめて食べてやって下さい。燻し肉なんかも同様かも。うすーくスライスしてお召し上がりください。ではではよろしくお願いいたします。  ( K子)

デビュー後もやっぱり元気いっぱい(のお尻)

放牧場デビュー前も元気いっぱい

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