「この土地で暮らす」という技術
ひろんた村母屋の基礎には、この「ひろんた」という谷間での歌野家(理事長一家)の自給生活があります。山から水と燃料をもらい、土から食べ物をもらい、先人の智恵を頼りに作れるものは作って暮らして、30余年が過ぎました。
この暮らしの技術ひとつひとつは、「技術」と呼ぶには完璧からほど遠いところにあります。けれど百姓とは土地で生きる自分なりの術を持った者のことであり、「いろんなことをそれなりにできる」こととともに、「できないこと、手に入らないものには折り合いをつける」という心持ちも伝えていきたいものだと考えます。
生きる術、足るを知る心、手と体を使って楽しむ心を、より多くの人と分かち合っていくことも、「ひろんた村」の大きな目標です。
【歌野家の暮らしと考え】
七輪に火を起こすのが、歌野家の一日の始まりです。おこす時には、風呂を焚いた時にとっておいた消炭がお役立ち。あとは冬場に焼いておく炭が、お湯、味噌汁、卵焼き、と順番に作ってくれ、パンもトーストしてくれます。冬だと調理の合間に硬めの炭にも火をつけ、掘り炬燵に入れます。
この谷で暮らしていくのにも、季節に応じて様々な仕事があります。米や野菜などの農の仕事、できたものを収納する仕事、加工の仕事、燃料を集めたり作ったりする仕事、水管理の仕事。それぞれに大変さがあります。天気に気をもんだり慌てたり、でもひとつの仕事が終わるとほっとします。「ほっ」とする瞬間、仕事が終わった後の風景、できたものの味わい。小さなことのひとつひとつが、静かな満足感をくれるのが自給自足の暮らしです。
異常気象が続き、そんな暮らしも大いに脅かされます。政治も社会も不安定な世の中で、わたしたちは次世代にどんな生き方を提案できるのでしょうか。お金が幸せを作れない傾向が一層強まる中、あふれる情報にいくら答えを求めてみても、やっぱり自給農という暮らし方にたどり着くのです。
そうは言っても、ゆるいところはゆるい歌野家の自給生活です。みなさんも、自分でできる範囲で、ものを、暮らしを、手づくりする楽しみを味わいませんか?そんな人が増えて、語り合うことができる場が増えることを願っています。
ひろんた
自給講座
2024年現在、「自給の暮らし体験」にてその季節の作業を織り交ぜる形でゆるく開催中。興味や季節に合わせてできることを話し合いながら過ごしましょう。
暮らしの技術は暮らしのためであり、どれかひとつを極めるのが目的ではありません。
米づくりにしても炭焼きにしても、各々は素人仕事の域を出ません。それでも家族が健康に、そして土地を汚さず暮らしていける最小限の技術と、そのための思想を一緒に学びたい。そんな気持ちから、ひろんた式自給学校プログラムを立ち上げました。
《要項》
1日5,000〜8,000円(時間と価格はメニューにより変動します)
複数日にまたがる場合は季節のメニューのほか、日常の作業やものづくりも盛り込みます。宿泊費別途(歌野家または桂山シェアハウスにて民泊)例:炭焼き講座 7泊8日 80,000円(税抜)
申し込み・お問い合わせは、電話・メールまたは「お問い合わせ」フォームからどうぞ!
※【自給の暮らし体験】もあります!
特別なメニューや座学は組まず、その時になされる作業に参加しながら七輪での調理や風呂焚き、季節の加工などの「暮らし」を体験するプログラムです。通年受け入れ可。
費用 10,000円/一泊/人(税抜)*学生さん8,500円(税抜)
《通年/季節ごとの作業例》
1週間プログラムの場合のサンプル:3月の講習・作業スケジュール
1日目 夕刻来島 夕食とオリエンテーション
2日目 味噌用の麹仕込み
(麦を洗って浸水→麹仕込み)
合間に七輪・消炭・炭の使い方講座
3日目 豆腐づくり
マヨネーズづくり
味噌利用講座
4日目 味噌搗き
5日目 土着菌堆肥づくり
畑作業
6日目 自由行動・観光・予備日
*期間中(または一部)電話・スマートフォン断ちも、メンバーで話し合って検討します。
講師紹介
歌野 敬
1951年 熊本県生まれ。創業に関わった広告出版会社に勤めつつ、段階的に田舎ぐらしを始める。86年に「ひろんた」へ。
90年代は「田舎暮らしの本」編集、2000年代は「上五島住民新聞」を刊行。古い布団綿を紡いで作品を作る「古綿工房」を主宰する傍ら、2007年より10年間、同志社大学嘱託講師として自立自給型生活論研究講座を担当。
2018年、「ひろんた村母屋」開設。
著書『僕らは中年開拓団』 『風車よまわれ』(いずれも連合出版刊) 『田舎暮らしの論理』(葦書房)
歌野 啓子
1952年 香川県生まれ。養護教員を経て、自給生活の基盤を支える。
1987年、自家飼養の放牧豚を使った燻製加工場「むぎんこ広場」を立ち上げる。
2018年「ひろんた村母屋」開設。「むぎんこ広場」が移行した「ひろんた村加工部」と農園部を率いて、種を播き、おいしい良品を生み出すために邁進中。
【自給学校】2020.10より